人生の見え方が変わるような本に出会えたのは、かなりラッキーな出来事だったと思う。しかも、3冊も。
高校時代の失恋から立ち直らせてくれた『チーズはどこへ消えた?』。社会人としてのスタンスを確立させてくれた『転職の思考法』。そして、より豊かな人生を送るためのヒントをくれた『限りある時間の使い方』だ。
ぼくは、タスク管理やタイムマネジメントこそ人生を豊かにすると思っていた。だが、この本を読んだとき、それだけではダメだったのだと悟った。それらはいわばアプリケーションなのだ。
アプリケーションがうまく動くためにはOSが必要。そして、『限りある時間の使い方』に書かれているのがOSだ。あきらめにも似た、だが人間をよくあらわした考え方。これがなければタスク管理やタイムマネジメントは機能しないのだ。
どんなにタスク管理をキッチリしても、思い通りにならないことにイライラしたり、家族を後回しにしていては、良い人生とは言えない。
この本を読むと、万能ではない自分、思い通りにならない現実、時間はコントロールできないという事実を受け入れることができるようになる。
本書の内容を、おそらく一番コンパクトに表しているであろう一節がある。ちょっとした小話だ。
メキシコの漁師が1日に2〜3時間しか働かず、太陽の下でワインを飲んだり、友達と楽器を演奏したりして過ごしている。それを見て愕然としたアメリカ人のビジネスマンは、漁師に勝手なアドバイスをする。
「もっとたくさん働きなさい、そうすれば利益で大きな漁船をたくさん買って、他人を雇って漁をさせ、何百万ドルも稼いで、さっさと引退することができる」。
それを聞いた漁師は「引退して何をするっていうんだ?」と尋ねる。ビジネスマンはそれに答えて言う。
「太陽の下でワインを飲んだり、友達と楽器を演奏したりできるじゃないか」
人生の本番は今、この時である。本書がくれたこのメッセージが、今のぼくの人生の見え方だ。